概略
ヨーロッパにミント(ハッカ)が伝わったのは、100年以上前のことだそうです。そのころから、欧米人は、ミントが冷感を引き起こすことに気づいていました。さらに、50年前に、スウェーデンの生理学者が口の中で冷たいことを感じる神経をメントールが刺激することを見いだしました。すなわち、ロッテのクールミントガムがペンギンが住む南極を思い起こすのは、CMによるすり込みのためではなく、冷感を感じる神経を刺激するためだったのです。

 ハッカやミントはスーッとした感覚(冷感)を引き起こします。それは、ハッカやミントの中にメントールと呼ばれる物質が含まれているからです。メントールの他にも冷感を引き起こす化学物質は、1200種類以上見つかっています。例えば、イシリンという超冷感誘起物質は、メントールよりも100倍以上薄い濃度でも冷感を引き起こします。メントールがヨーロッパやアメリカに伝えられたのは、19世紀の末だそうです。そのころから、欧米の人々はハッカが涼しい感覚を生じさせることに気づいていました。

メントールはどこで感じている?
 メントールを一番感じやすい体の部位は、目と鼻腔です。その次に感じやすいのは、舌を含む口腔内です。これらの部位よりも感度は鈍いのですが、脇の下や胸、あるいは腕などの体の様々なところで、メントールを冷たいと感じています。

メントールを冷感を感じる受容体を直接活性化する
 どうして、ハッカが冷感を引き起こすかが科学的に明らかにされたのは、今から50年ほど前のことです。スウェーデンの生理学者が、口腔内で低温を感じる神経にメントールを与えると、温度を下げるのと同じような応答が生ずることを示しました。この結果は、メントールが引き起こす冷感は、脳の中で複雑な情報処理がなされることにより認識される感覚ではなく、低温を感じる神経をメントールが直接興奮させることにより生ずる感覚であることを明らかにしました。最近、低温を感じる蛋白質(冷感受容体)が見つかりました。冷感受容体にメントールを作用させると、温度を下げたときと同じような応答を示しました。このようなことから、温度を感じる神経細胞に存在する冷感受容体が温度変化とメントールの両方を感じる働きをしていることが明らかになりました。<

メントールによる冷感の増強
 ハッカが入ったお菓子を食べた後に、冷えた水を口に含むといつもよりも冷たく感じます。これは、メントールが冷感受容体に結合すると、冷感受容体が低温刺激に対して敏感になるためです。ただし、ハッカが入った水の自体は、ハッカの入っていない水のよりも冷たく感じますが、ハッカを舐めた後に感じる冷感の増強ほど顕著ではありません。

メントールによる温感の修飾
 それでは、温感に対するハッカの作用はどうでしょう。ハッカを舐めた後に温かい水を口に含むと、予想通りに水をあまり温かくなく感じます。しかしながら、ハッカを含んだ水自体は、ハッカを含まない水と比べるとより温かく感じます。このように、ハッカの温感に対する作用は複雑です。

辛味に対するメントールの影響
 ハッカは冷感を引き起こしますが、唐辛子は逆に温感を引き起こします。これは、唐辛子の辛味成分であるカプサイシンが暖かさを感じる神経を興奮させるためです。不思議なことにハッカを舐めた後に唐辛子を舐めるとより強く感じます。どうしてこのような現象が生ずるのかは、今のところ説明できません。しかし、辛い食べ物が苦手な人は、辛い食べ物を食べる前には、ハッカが入った食べ物や飲み物をとるのは控えた方が良いということです。