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カロリンスカ研究所 MTC
石井秀幸

カロリンスカ研究所 病院
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カロリンスカ研究所 病院

 皆さんご無沙汰しております。石井です。

 カロリンスカに着てから早1年。いまだにスウェーデン特有の気質と研究生活に慣れないながらも何とかたどり着いた折り返し地点です(とりあえず2年予定)。海外生活は振り返ってみるとかなり厳しいものがあったと感じております。巷の留学体験記には「エンジョイ」「素敵な体験」的な文面が目立ちますがその境地にたどり着くためには幾多の苦労を乗り越えているのだと実感しています。

 現在私はEBウイルスに感染しているNK腫瘍細胞株と単球を共培養してLMP1蛋白の発現を見ております。EBウイルスは発癌ウイルスであり、LMP1はEBウイルスが産生する癌遺伝子のため、その発現はEBウイルスを相手にしている研究者にとって避けて通れないテーマです。また腫瘍細胞と正常細胞の関連を考えながらの研究は興味深いものがあります。しかしデータはまだ少ししか出ておらず形になるにはまだ遠い道のりのようです。

 私が所属しているのはカロリンスカ研究所の中のMTC(microbiology and tumor biology center)という部門です。ボスであるエバ・クライン教授は御歳82歳。日本ではとっくに引退の年齢ですが、かの有名なジョーブ博士も81歳ですからお年寄り侮れません。グループのメンバーは6人でみんなPhD studentsですが、英語ができるので文献を読むスピードがまるで違い知識量が豊富で私は気後れしております。スウェーデンのラボは5時帰宅が一般的ですが、私のいるラボでは皆さん大体夜8時ごろ帰宅しています。

 研究していて感じるのは、お金です。当然なのですが、論文が発表されずグラントが当たらないとお金が入ってきませんので研究は滞りラボは潰れるわけです。その更新は2〜3年毎ですから研究稼業はシビアな自転車操業です。機器、試薬の購入、機器の使用(使用料がとられる)には厳しい監査の目が光っています。私も2,3度呼び出され説教を食らいました(英語がよくわかってないので酷いことを言われてもあまりこたえない(失笑))。そうは言っても皆さん条件は同じなわけで隣のラボと抗体の貸し借りなど妙なコラボレーションが日々見られます。

 もう一つお金といえば給料ですが一人身がやっと生活できる程度のものです。大学の独立法人化に伴い大学からの給料は0なので、収入はラボからの給料のみです。帰国費用や引越し、社会保険、健康保険、税金など出国前には何かとお金がかかりますので留学を考えている方は多少の蓄えを今からしておくか、海外で適応のあるグラントを自分でとってくる必要があります(それができれば教授になれるわけですが)。

 とネガティブなことばかり書き込みましたが、海外での生活はスリリングであり、人とのコミュニケーションはカルチャーショックの連続です。私の住むアパートには世界各国からの研究者が滞在しており時々パーティーも開かれるためスウェーデン人以外の方と話す機会が多いのですが、食べ物、社会システム、娯楽、戦争のことなど日本との差に愕然とすることが多いです。私の滞在しているスウェーデンは男女平等の社会であり、研究所内も女性がかなり多く、夫婦で研究者というのもまれではありません。また長い歴史を持つ国であり日本には無い建築物が多く見られます。ストックホルムは北欧のベニスといわれるだけあり遊覧船での観光は心を癒してくれます。

 海外生活は日本に比べ腹の立つことや辛いことが多いのですが、様々な場面で色々考えながら、海外の人の中で何とか生活していく経験は早々できるものではありません。なにかしらこれからの人生に役立つと思います。

ラボのスタッフと
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ラボのスタッフと