夜空にぽっかりと浮かんでいる月。当たり前のように太陽の光を照り返して、満ち欠けを繰り返している月。月の成因説には、兄弟説(地球と月がほぼ同時に近い領域でできた)、親子説(遠心力により地球から月がちぎれた)、他人説(地球から遠く離れた場所で誕生した月が、地球近くを移動中に地球の重力にとらえられた)などいくつかが考えられてきました。しかし、アポロ宇宙船が持ち帰った月の石の組成研究から、現在最も有力なのが、ジャイアントインパクト説です。数十億年前に火星大の原始惑星が地球に衝突して飛び散ったマントルが地球の周りで固まり、月になったと説明されています。
仮にこの原始惑星の軌道がちょっとでもずれ、月が誕生していなかったら現在の地球はどのようになっていたでしょう。ある専門書によると、月がない地球では、潮汐による摩擦がなく、いまよりずっと速い自転のため強風が吹き荒れ、生命にとっては過酷な環境であることから、進化のスピードもずっと遅くなっていたようです。太陰暦も生まれなかったでしょう。地球の自転はおよそ8時間ほどであり、生物の現在のライフサイクルとは大きく異なったものになったと想像されます。そう考えてみると、そもそも、人間そのものが誕生していたかという疑問も生じてきます。
 そのような視点から「月」を考えたとき、「月のある地球上で、今を生きている私たち」は、その存在に感謝せずにはいられません。
この二つの惑星衝突による飛沫を描いていると、何処からともなく湧出したsymbolic character 群(講座名)が衝突境界面を超えて突き進んでいく姿。
それはまさに、地球生命の誕生を予感させるものでした。

旭川医科大学 研究フォーラム Vol.6 No.1