1997年10月、土星に向けて放たれた探査機「カッシーニ」が6年8か月、35億キロメートルの旅を経て、2004年7月1日、土星に到着(周回軌道に入る)しました。周回機は4年半をかけて、土星本体やその衛星を詳しく探査します。さらに、突入機(プローブ)「ホイヘンス」が2004年12月に本体から切り離され、2005年1月14日(日本時間)タイタンに突入、着陸に成功しました。因みにカッシーニは、土星の輪にすき間があることを発見(1675年)した天文学者であり、また、ホイヘンスは、タイタンを発見(1655年)した科学者です。
 土星は、太陽系の太陽に近い方から6番目の惑星であり、太陽系内で木星に次いで大きい、ガスを主成分とする惑星(ガス惑星)です。直径は地球の約9.4倍、質量は約95倍、中心に岩石の核を持ち、その上に液体金属水素の層、分子水素の層を持ちます。見た目の大きな特徴として、惑星の周りに輪(環)があります。この輪はシリカや酸化鉄、氷の粒子などで構成されており、粒子は細かい塵状のものから、小さな自動車程度の物まであるようです。タイタンは土星衛星31個のうち最大。科学者達はその大気が初期の地球に似ていると考え、地球上の生命がどのようにして生まれたかを探る手がかりになるのではないかと見ています。
 これらの測定データを地球に送信するのに84分を要します。光(電磁波)で1時間以上かかるのです。とてつもない距離を旅し、針の穴を通すほどの精度で目的地点に到達させる技術力とそれを成功させる地球人の「宇宙にかける思い」にはただ驚くばかりです。ところで、カッシーニには、世界81か国の市民61万人のサインを記録したディスクが搭載されています。これらは、土星旅行の夢を託そうとNASAの公募に応じた人々のサインです。このなかには、カッシーニの子孫のサインも含まれているとのことです。人類の文明の象徴でもある「文字」が土星のリング上を回っているのです。まさに、衛星タイタン(左上)を従え、太陽(右上)の光に照り映えるリング(講座名)をかぶった土星(右下)なのでした。

旭川医科大学 研究フォーラム Vol.5 No.1