1. 眼循環測定装置の開発・臨床応用
レーザードップラ法を用いてヒトの網膜や中心窩脈絡毛細血管板の血流量・血流速度を測定する装置(Laser Doppler VelocimetryおよびLaser Doppler Flowmetry)を開発し、従来では評価することが難しかった網膜および脈絡膜循環を無侵襲で瞬時に測定することが可能となった。
現在、これらの装置を用いて網膜疾患の病態解明や治療効果の判定などに取り組んでいる。
2. 走査レーザー検眼鏡を用いた視機能評価およびロービジョンクリニック
ハーバード大学眼科スケペンス眼研究所と旭川医大眼科の共同研究により、網膜を直接観察しながら網膜局所の機能評価を行う装置を開発した。
本装置により疾病早期の網膜機能障害の検出はもとより、視機能が著しく障害された(ロービジョン)患者の残存視機能の評価も可能となり、残存する機能を有効に利用するためのロービジョンクリニックへの応用が検討されている。
3. エキシマレーザーを用いた屈折矯正手術
エキシマレーザーを用いた屈折矯正手術は、主に近視矯正を目的とした治療で、術後も長期間安定した効果が得られる。2000年1月の当時の厚生相の認可にあわせ、当科では国立大学では初めて本装置を導入し、手術を開始した。レーザーを用いて角膜中央部の組織を切除することで、角膜の形状を変化させ近視矯正を行う。
当科では、中等度までの近視患者の90%以上が術後1.0以上の裸眼視力(メガネなしの視力)を得ている。高度近視患者ではややばらつくものの、おおむね裸眼でも生活できる視力(0.6〜0.7)を得ることが可能となった。
2000年8月からは痛みが少なく、視力回復の早いLASIK(レーシック)と呼ばれる手術法を導入し、良好な手術成績が得られている。手術時間は両眼合わせて約20分である。
4. 画像の伝送技術の開発とこれを用いた遠隔医療
第一線の眼科診療に利用できる鮮明な動画映像を遠隔地に伝送する技術の開発、さらに三次元動画映像の伝送技術の開発に取り組んでいる。これを用いて遠隔地の医師に対する診療支援を日常的に行っている。
またハーバード大学眼科、スケペンス眼研究所の国際遠隔医療センターと結び、診療や研究について意見交換を行っている。
5. 経瞳孔的温熱療法
本療法は、現在有効な治療法が確立していない加齢黄斑変性を主とする中心窩脈絡膜新生血管に対する新しい治療法であり、視機能の維持・改善が期待されている。
低出力の半導体レーザーを長時間(60秒)照射することにより、網膜の障害を最小限に抑えて新生血管の血管閉塞を誘導する。
6. 網膜の神経保護に関する研究
現在の医学水準をもっても、障害された網膜の神経を再生させることは困難である。神経組織には本来、ストレスに対し神経を保護する機能が備わっている。
分子生物学的にこの神経保護機能のメカニズムを解明し、これを糸口に網膜虚血時や高眼圧時における網膜の神経障害に対する治療法の開発に取り組んでいる。
7. 血管新生抑制に関する研究
前述の加齢黄斑変性でみられる脈絡膜新生血管や増殖糖尿病網膜症で生じる網膜新生血管発生のメカニズムと、その抑制について研究している。
8. 糖尿病網膜症発症メカニズムの解明および治療薬に関する研究
糖尿病網膜症の病態解明を、分子生物学や網膜循環などの面から研究している。
9. 血液網膜柵の透過性機能に関する研究
網膜中の水を網膜外に排出する、血液網膜柵の外方透過性機能のメカニズムを解明するとともに、糖尿病網膜症などで重篤な視力障害を引き起こす黄斑浮腫に対する治療薬の開発に、血液網膜柵の透過性機能の観点から評価し、取り組んでいる。
10. 角膜上皮ターンオーバーのメカニズム解明およびドライアイ治療薬に関する研究
正常状態において角膜上皮は表層の細胞が常に脱落し、新しい細胞におきかわる。この生理的状況のメカニズムを分子生物学的に解明し、ドライアイなどの病的状態に対する治療への応用を目指し研究している。
11. 薬学的後部硝子体剥離に関する研究
後部硝子体未剥離眼では、硝子体手術の際に後部硝子体剥離を作成する。この際、網膜裂孔などの合併症が生じる危険性がある。従ってより安全な硝子体手術を行うため薬物を用いて人工的後部硝子体剥離を作成する方法を検討している。








