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胃癌の診断と治療

概説

胃癌は我が国で最も罹患率の高い悪性腫瘍であり、男性で最多、女性では大腸癌、 乳癌についで多い疾患です。胃癌は世界的には減少傾向ですが、本邦では人口の高齢化に伴い罹患患者数は男女ともにいまだに増加傾向にあります。早期胃癌に 対する内視鏡治療など低侵襲治療法が開発されていますが化学療法に関してはその成績はまだ十分なものではありません。当科では胃癌の早期発見、早期治療を 目的に積極的な内視鏡検査を推奨しています。さらに胃癌が発見された場合には胃癌治療ガイドラインに基づいた集学的治療を実施しております。

胃癌の診断

胃癌の診断には様々な検査方法があります。当院では以下のような検査方法を用いて胃癌の発見に努めております。
1.上部内視鏡 (EGD)
2.通常光観察 (拡大観察)、画像強調観察 (NBI, AFI)
3.超音波内視鏡
4.造影X線検査
5.CT、MRI
胃癌は病期(ステージ)によって治療法が選択されます。胃癌のステージは、1.深達度,2.リンパ節転移,3.遠隔転移の状況で分類されます。

胃癌の治療

胃癌の治療
胃癌の治療は胃癌治療ガイドライン(日本胃癌学会2014年)に基づき行っております。当科では胃癌の診断だけでなく、早期胃癌に対する内視鏡治療や切除 不能・再発胃癌に対する化学療法を積極的に実施しています。

(1)内視鏡治療
胃癌の内視鏡治療は早期胃癌に対して適応となります。胃癌治療ガイドラインでは適応が以下のように定義されています。

内視鏡治療の絶対適応 (胃癌治療ガイドライン 2014年度版)
・適応の原則
リンパ節転移の可能性が極めて低く、腫瘍が一括切除出来る大きさと部位にあること。
・絶対適応病変
2cm以下の肉眼的粘膜内癌(cT1a,M)と診断される分化型癌。肉眼型は問わないがUL(-)に限る。
・適応拡大病変
1)2cmを超えるUL(-)の分化型cT1a(M)
2)3cm以下のUL(+)の分化型cT1a(M)
3)2cm以下のUL(-)の未分化cT1aについては脈管侵襲(ly,v)がない場合にはリンパ節転移の危険性が極めて低く、適応を拡大して良い可能性 があ る。
これらの病変はEMRでは不完全切除となる可能性が高いためにESDを行うべきでとされています。

内視鏡治療には以下のような方法があります。
∗    ポリペクトミー:Polypectomy
∗    内視鏡的大腸粘膜切除術:EMR
∗    内視鏡的大腸粘膜下層切開剥離術:ESD

胃癌の治療:ポリペクトミー

病巣茎部にスネアをかけて高周波電流で焼灼切除する方法です。主に隆起性病変(有茎性)が対象となります。

胃癌の治療:内視鏡的粘膜切除術(EMR)

粘膜下層に生理食塩水などを局注して病巣を挙上させ、ポリペクトミーの手技により焼灼切除する方法です。表面型腫瘍、無茎性病変にも可能となります。

胃癌の治療:内視鏡的粘膜下層切開剥離術(ESD)

病変周囲、粘膜下層にヒアルロン酸などを局注して病巣を挙上させ、専用のナイフで病変周囲の切開、粘膜下層の剥離をすすめ腫瘍を一括切除する手技です。主 としてEMRで一括切除出来ない大きな腫瘍が適応となります。

内視鏡治療の根治性の診断
EMR及びESDの根治性は局所の完全切除とリンパ節転移の可能性なしという2つの要素によって決定されます。この2つの要素のどちらかが欠けても遺残再 発、もしくはリンパ節転移による再発の可能性が残り治癒切除とはなりません。
・治癒切除
腫瘍が一括切除され、腫瘍が2cm以下、分化型癌で深達度がT1a(M)、HM(-)、VM(-)、ly(-)、v(-)であること。これらがすべて満た された時に治癒切除となります。
・適応拡大 治癒切除
一括切除が施行され、切除標本が、(1) 2cmを超えるUL(-)の分化型cT1a(M)、(2) 3cm以下のUL(+)の分化型cT1a(M)、(3) 2cm以下のUL(-)の未分化型cT1a、(4) 3cm以下の分化型かつ深達度がpTab(SM, 浸潤距離が500μm未満)、のいずれかであり、かつHM0、VM0、ly(-)、v(-)であった場合を適応拡大治癒切除となります。
・非治癒切 除
上記の絶対適応、拡大適応の治癒切除条件に1つでも当てはまらない場合を日治癒切除となります。

切除標本の病理診断で根治判定を行い治癒切除となった場合には年に1−2回の内視鏡検査で経過観察となります。適応拡大治癒切除病変の場合には年に1−2 回の内視鏡検査に加えてCT検査を行い転移の有無を検索して行きます。治癒切除、適応拡大治癒切除ともにH.pylori感染を認める場合には除菌療法が 推奨されています。

胃癌の治療:外科的治療

癌の深達度がSM高度浸潤より深いもの、リンパ節転移を有するものは外科的切除の適応となります。

胃癌の治療:化学療法

化学療法には、術後再発抑制を目的とした補助化学療法と切除不能な進行再発発大腸癌を対象とした全身化学療法があります。

術後補助化学療法
【基本概念】
術後補助化学療法は治癒切除後の微小遺残腫瘍による再発予防を目的として行われる化学療法です。2006年にACTS-GC試験が行われ経口抗がん剤であ るS-1の有効性が示されました。そのためS-1内服が我が国の標準的補助化学療法となっています。

【適応の原則】
1.    治癒切除が行われたpStageU、pStageV症例
2.    主要臓器機能が保たれている(血液、肝機能、腎機能)
3.    PSが0−1(日常生活に支障がない活動レベル)
4.    術後合併症から回復している
5.    重篤な合併症が無い
6.    十分なインフォームドコンセントが得られている
手術からの回復を待って、術後6週間以内にS-1内服を開始します。標準量80mg/m2/dayの4週間投与2週間休薬を1コースとし術後1年間継続し ます。非手術症例に比較して術後投与では血液毒性、非血液毒性ともに出現しやすいために、薬剤投与量を減量したり、投与スケジュールを2週間投与1週間休 薬に変更するなどの対応を行います。

【副作用に関して】
S1療法では赤血球減少、白血球減少、血小板数減少、食欲不振、悪心、倦怠感、色素沈着障害、下痢、口内炎、発疹などがあげられます。
【抗がん剤治療の治療効果判定について】
抗がん剤治療中の検査については、血液検査、尿検査で有害事象の有無を確認します。また月に一度、腫瘍マーカーの増減を確認していきます。2−3ヶ月毎に 画像検査(CT、MRI、PET-CT)を行い治療効果判定を行います。

切除不能進行再発胃癌に対する化学療法
【抗がん剤治療の目的】
切除不能進行再発胃癌に対する化学療法は最近の進歩によって高い腫瘍縮小効果(奏功率)を実現できるようになりました。しかしながら化学療法による完全治 癒が現時点では困難であります。国内外の臨床試験からは生存期間の中央値は6−13ヶ月です。癌の進行に伴う臨床症状発現時期の遅延及び生存期間の延長が 当面の治療目標となっています。
化学療法の臨床的意義は、抗癌剤を用いない対症療法群との無作為比較試験において、化学療法群に生存期間の延長が検証されたことからその意義が認められて います。したがって切除不能進行再発胃癌、非治癒切除症例に対して化学療法は第一に考慮される治療法となります。

【抗がん剤治療の実際】
抗がん剤治療は切除不能胃癌患者様の誰でも受けることが出来る訳ではありません。抗がん剤治療には副作用が伴いますので全身状態や血液検査などを参考にし て実施出来るかどうかについて判断します。病状が進行して抗がん剤治療により全身状態がさらに悪化する可能性が高い場合には対症療法を中心にした緩和ケア を行うことになります。また最近の抗がん剤治療の費用は高額になっていますので高額療養費制度などについて、病院の医事科や支援センターのソーシャルワー カーに相談し手続きをとることをお勧めしています。

【適応の原則】
1.    切除不能進行・再発症例
2.    非治癒切除症例
3.    主要臓器機能が保たれている(血液、肝機能、腎機能)
4.    PSが0−1(日常生活に支障がない活動レベル)
5.    重篤な合併症が無い
6.    十分なインフォームドコンセントが得られている

【切除不能進行再発胃癌に対する化学療法について】
切除不能進行再発胃癌に対する抗がん剤治療は主に三段階の治療法があります。最初に受ける抗がん剤治療を一次治療、その後腫瘍が増大したり副作用で治療継 続出来なくなった場合は二次治療、二次治療後に増大や副作用で治療継続が困難になった場合の三次治療というように段階を踏んで治療を選択して行きます。す なわち抗がん剤治療では明らかに腫瘍が増大したり副作用で治療が継続出来なくなるまで同一の治療法を出来るだけ長く継続するのが一般的な治療となります。 また転移病巣が大幅に縮小して手術的に切除可能と判断される場合には外科的治療を試みる場合もあります。この場合には外科と内科が共同で治療方針を検討し て行くことになります。
分子標的薬について
分子標的療法とは従来の抗がん剤とは異なり、ある特定の分子を標的としてその機能を制御する治療法です。現在胃癌治療ではトラスツマブという薬剤が保険適 応となっております。トラスツマブは癌細胞表面のHER2と呼ばれる蛋白質だけに作用して、癌細胞の増殖を阻害する薬剤です。トラスツマブはすべての胃癌 の化学療法に使用できるわけではありません。あらかじめ病理検査でHER2が強発現している症例だけが適応となります。
一次治療で推奨されている抗がん剤療法
HER2の発現の有無により治療法が変わります
HER2陰性胃癌
・S-1+シスプラチン
・カペシタビン+シスプラチン
・S-1+オキサリプラチン
・カペシタビン+オキサリプラチン
HER2陽性胃癌
・カペシタビン+シスプラチン+トラスツマブ
・S-1+シスプラチン+トラスツマブ

抗がん剤治療の主な副作用
・消化器症状・・・嘔気、嘔吐、下痢、食欲低下、口内炎、味覚低下、倦怠感
・血液症状・・・白血球減少による発熱、貧血に寄る倦怠感、血小板減少に伴う出血傾向
・末梢神経傷害・・・手足のしびれ、口内違和感
・アレルギー反応・・・発疹、呼吸苦、血圧低下
・皮膚症状・・・手足症候群

【抗がん剤治療の治療効果判定について】
抗がん剤治療中の検査については、血液検査、尿検査で有害事象の有無を確認します。また月に一度、腫瘍マーカーの増減を確認していきます。2−3ヶ月毎に 画像検査(CT、MRI、PET-CT)を行い治療効果判定を行います。残念ながら治療効果が得られなかったり、腫瘍が増大傾向となった場合には二次治 療、三次治療へ移行していきます。

緩和ケア

緩和ケアとは生命を脅かす疾患に関連する問題に直面している患者とその家族に対して、痛みとその他の身体的問題、心理社会的問題、スピリチュアルな問題を 早期に同定し、適切に評価し対応することを通して、苦痛を予防し緩和することによって、患者と家族のQOLを改善するアプローチです(WHO, 2002年)。胃癌の進行に伴い、苦痛が生じた際には、緩和ケア科や旭川市内における関連病院と連携し患者様のQOL向上に努めていきます。