医局員便り

留学便り

太田 雄 (肝胆膵)

2019年3月から米国フロリダ州のジャクソンビルという都市にあるMayo Clinicでの留学が始まり、高橋先生も留学なされたPatel教授の研究室で研究させてもらっています。研究室はPIのPatel教授、皆から絶大な信頼を得ているTechnician、将来的にMedical Schoolへの進学を志す若い研究者2人、インド出身のPh.D.と私が主なメンバーです。

研究室の主要テーマは、肝・胆道癌におけるExtracellular Vesicle (EV) を中心とした機能解析から医学的応用です。アメリカならではのスケールの大きな研究としては、肝癌細胞株をロケットに乗せて発射し、肝癌細胞が放出するEVに対する重力の影響を解析しております。ナノレベルのBench workから宇宙規模のRocket launchまで行う研究室です。

私は肝癌細胞と肝星細胞のEVを介した細胞間コミュニケーションについて研究しており、また日本人留学者より引き継いだ肝癌モデルマウスの作製を任されております。Negative dataばかり積み重なっておりますが、Patel教授は常に励ましてくれて、ラボメンバーも献身的にサポートしてくれます。さらに英語に対するdisadvantageを常々感じておりますが、ミーティングでは実験ノートを指さしながら説明したり、日常ではsmileとbody languageで乗り切っております。そんな私に付き合ってくれるPatel教授やラボメンバーにとても感謝しています。

こちらでの1週間の流れは月曜日にラボミーティング、木曜日にPatel教授とone-on-oneでのミーティング、そして金曜日にWeekly Reportを提出しています。週末にはラボメンバーで遊びに行ったりします。いま研究室で”Escape Room”というアミューズメントが流行っていて、いわゆる”謎解き脱出ゲーム”ですが、皆で団結して数々の密室空間から脱出してきました。

皆が仲良く親切にあふれた研究室です。ここでのかけがえのない経験から一つでも多くの事を持ち帰りたいと思っております。


ラボメンバー集合写真(左からDr.Patel, Claudia (Medical student), Caitlyn (Coordinator), Jonathan, James (Graduate student), Omar (Graduate student), Julia, Irene, Anuradha, 私)


高橋 賢治 (肝胆膵)

消化器グループの高橋です。自身の留学体験と消化器グループの基礎研究の現状について概説します。私は大学院時代、主に膵癌の進展制御機構をテーマとした基礎研究に携わっていました。大学院を卒業し学位を取得後は、しばらく関連病院で臨床に従事していました。その後2011年から2014年までの3年弱の間、羽田前教授のご厚意で、米国へ研究留学する機会を頂きました。留学先はフロリダ州ジャクソンビルにあるMayo Clinic Florida、Cancer BiologyのTushar Patelラボで、Patel教授の専門である肝癌、胆管癌の発癌・進展に関わる分子生物学的な機序をテーマとした基礎研究に携わらせて頂きました。特に、「長鎖機能性RNA(lncRNA)」と「細胞外小胞(EV)」といった、癌基礎研究においては当時先駆的な分野について数多くの知見を得る事ができました。

フロリダ州はカリブ海に近く、2月から11月まで泳ぐ事ができる温暖な気候です。ディズニーワールドやユニバーサルスタジオといった数多くのテーマパークや、美しいビーチが散在し、米国の中ではいわゆるリゾートエリアとして位置付けられています。私は妻と3歳の息子の3人で渡米しましたが、仕事がオフの際には多くの時間を一緒に過ごす事ができました。また、異文化の中でいろいろな国の方々と触れ合う機会があり、家族ともども大変貴重な体験をさせて頂きました。

留学先での契約は1年更新でしたので、期限内に結果を出さなければというプレッシャーは常々ありましたが、留学生活は私にとって、とても大きな財産となりました。当初、長くても2年間との約束で渡米致しましたが、結局3年弱の期間、米国で勉強する機会を頂きました。

帰国後は、留学中に得た知見を自身の専門である膵臓・胆道領域に応用し、新たな研究プロジェクトを立ち上げました。プロジェクトのいくつかは、Mayo Clinic Floridaや英国のRoyal Cancer Hospitalとの共同研究として行っています。研究成果は毎年国内外の学会で発表しており、将来的には肝胆膵癌の早期発見に寄与する新規バイオマーカーの発見と、治療応用に繋げる事を目標としています。臨床だけではなく、基礎研究にも興味のある若い先生方と一緒にプロジェクトを進めて行けたらと思います。将来的に学位の取得や海外への留学希望のある方は、気軽に研究室に見学に来て下さい。