富田唯先生(放射線講座)が、
旭川医科大学医学博士号を授与されました。
2019年クリスマス日、
おめでとうございます!
2019年 12月26日
tomita
富田先生は、これまで、私の挑戦の“三つの先駆者”として活躍してくれました。本学で講座(CVRI)を立ち上げた10年前から、学部学生にサイエンスマインドの重要性を訴え、独自に医学研究体験コースを開設しましたが、正直、学生が来てくれるか不安でした。この初年度、たった一人訪れてくれたのが、当時、医学6年の富田先生でした。それ以降、多くの学生が私の講座で研究に触れ、昨年からは、医学4年を対象とする全学的な研究体験実習に発展しています。 二つ目は、臓器や疾患を超えた毛細血管研究展開を考え、本学では臨床講座として異例ともいえる、他講座からの大学院生を募集しました。そして、放射線講座で研修されていた富田先生が、他講座からの大学院生として、初めて私の講座に来てくれました。 その後、血管外科や皮膚科など多くの他講座の大学院生が集うことになります。 三つ目は、毛細血管研究を進めていく中で、末梢神経再生との密接な関係、重要性に気づき、ぜひ、神経再生を本講座のもう一つの柱にしていきたいと考えておりました。そこに、我々としては未知の神経再生研究に最初に着手してくれたのが富田先生でした。本当に手探りの大変な仕事でしたが、富田先生は見事に貫徹し、本講座の神経再生研究の礎を築いてくれました。 我々は、血管新生に関わる新規因子としてNinjurin1(Ninj1)を見出しましたが、実は、20年ほどまえに末梢神経障害時に発現誘導される分子として発見されていました。 発見当時、神経再生に関わるのではと期待されたものの、ノックアウトマウスなど駆使しても、その生理作用がほとんどわからず、闇に埋もれていた代物でした。 富田先生は、毛細血管の特定の細胞のNinj1遺伝子欠損を自在に誘導する特殊なマウスを用いて、Ninj1が神経再生に重要であることを、はじめて「実証」してくれました。そして、我々の狙い通り、血管新生と神経再生を密接に連関させるキー分子としてのNinj1を証明してくれたわけです。 今年の日本分子生物学会の富田先生の研究発表では、Ninj1の発見者である荒木敏之先生(国立精神神経医療研究センター部長)が、わざわざ挨拶にきてくれました。富田先生の博士論文は「Ninjurin1 mediated peripheral nerve regeneration through Schwann cell maturation of NG2-positive cells」BBRC 519, 462-468, 2019。 富田先生の先駆的な洞察性、その実行力を、ご自身の専門分野でも発揮され、今後、ますます、ご活躍されることを期待しています! 
生化学講座、心血管再生先端医療開発講座(CVRI) 川辺淳一